こんにちは、境町在住ライターのみなみです。境町を歩いていると、ときどき「アルゼンチン」の文字に出会います。町の施設名にも、小学校の行事にも、東京オリンピックのときの記録にも出てきます。はじめは「なぜ茨城のこの町でアルゼンチン?」と不思議でしたが、調べてみたら、そのはじまりは黒船来航まで遡るとても長い話でした。
この記事では、境町とアルゼンチン共和国のつながりを、外務省や境町公式サイトで公表されている情報をもとに整理しつつ、その歴史がいまも残る「モンテネグロ会館」の楽しみ方まで紹介します。個人的に、境町でいちばん語りがいのある場所だと思っているところです。
- 境町とアルゼンチンの交流が黒船からはじまった経緯
- モンテネグロ会館の見どころと、入っているさしま茶カフェの基本情報
- 東京2020のホストタウンとして残った施設と、いま訪ねられる場所
まず結論:境町とアルゼンチンは、約170年つづく交流があります
外務省のウェブサイト「グローカル外交ネット」に、在アルゼンチン日本国大使が書いた境町の記事が掲載されています(2022年3月30日付)。そこでは、境町とアルゼンチンの交流は約170年前のペリーの黒船来航にはじまったと紹介されています(確認日:2026-07-28)。
そして境町は、2016年に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のアルゼンチン共和国のホストタウンとして国に登録され、大会直前には選手団を受け入れました。町にはその名残の施設が残り、交流の歴史を展示する「モンテネグロ会館」もあります。
つまり「ちょっとした国際交流」ではなく、江戸時代から現在まで、名前と場所がはっきり残っているつながりなんです。ここ、ほんとうに面白いところだと思っています。
境町とアルゼンチンのつながり年表
外務省の記事と境町公式サイトの記載をもとに、大きな流れを整理しました(確認日:2026-07-28)。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 約170年前(ペリー来航期) | ペリー艦隊にいたアルゼンチン人船員モンテネグロ氏を、境町域出身の幕府役人・野本作次郎氏が接遇し、交流が生まれる |
| 1933年 | ペリーの孫の来日を機に、野本作次郎氏の孫・作兵衛氏と駐日アルゼンチン公使アルトゥーロ・モンテネグロ氏が書簡で知り合う |
| 1935年 | モンテネグロ公使が、作兵衛氏の母校である長田小学校(当時の猿島郡長田村)を訪問 |
| 1937年(昭和12年) | モンテネグロ公使の援助により、地域の青年研修所として「モンテネグロ会館」が建てられる |
| 1965年 | 交流30周年を記念する会が開かれ、戦争で途絶えていた交流が復活 |
| 1989年(平成元年) | 長田小学校で第1回「アルゼンチンの日の集い」を開催 |
| 2016年 | アルゼンチン共和国を相手国とするホストタウンに登録(同年6月14日発表) |
| 2018年(平成30年) | 日亜外交樹立120周年に駐日アルゼンチン大使が会館を来訪 |
| 2020年9月 | モンテネグロ会館が、隈研吾さんの設計で改築されて完成 |
| 2021年7月 | アルゼンチン選手団が境町で東京2020の事前キャンプを実施 |
はじまりは黒船と、一通の手紙
祖父同士の出会いが、80年後に見つかった
外務省の記事によると、ペリー艦隊の一行にモンテネグロ氏というアルゼンチン人船員がいて、この人を幕府の役人だった境町(当時は別の名称)出身の野本作次郎氏が接遇したことから、ふたりは交流を深めていったそうです。
その約80年後の1933年、ペリーの孫が来日した際に当時の関係者の子孫を探すことになり、野本作次郎氏の孫・作兵衛氏と、当時の駐日アルゼンチン公使アルトゥーロ・モンテネグロ氏が書簡を通じて知り合います。ここで「祖父同士が知り合いだった」ことが判明した、というわけです。
私はこのくだりが好きで、境町の歴史のなかでもいちばんドラマチックだと思っています。偶然の出会いが、手紙で80年越しにつながり直したという話ですから。
1935年、村をあげての大歓迎
これが契機となり、1935年にモンテネグロ公使が作兵衛氏の母校・長田小学校を訪問することになります。外務省の記事では、当時の様子がこう伝えられています。静かな村は大騒ぎで、沿道が人で埋め尽くされるほどの歓待。村に電話はなく、自動車も一台あるだけだったため、公使の訪問のために道路に砂利をまいて車道を作ったと言われている——。
この歓迎を受けたモンテネグロ公使は、離任までの7年間に、地域の青年研修所としてモンテネグロ会館の建築費用を寄付し、さらに優秀な卒業生に「モンテネグロ賞」という奨学金を給付し続けたそうです。建物の名前がそのまま人の名前なのは、こういう理由なんですね。
子どもたちが受け継いできた交流
その後、戦争によって交流は中断しますが、1965年に交流30周年を記念する会が開かれ、当時の在京アルゼンチン大使が長田小学校を訪問して交流が復活します。長田小学校では1989年(平成元年)の第1回を皮切りに「アルゼンチンの日の集い」が続けられてきました(外務省の記事の時点で計32回)。
また境町は、小学校の児童をアルゼンチンへ派遣するプログラムも実施してきました。ホームステイで現地の生活を体験し、在アルゼンチン茨城県人会や日亜学院などと交流する内容だったと紹介されています。
※「アルゼンチンの日の集い」や派遣プログラムの最新の実施状況は、年度によって変わります。現在の実施の有無や内容は、境町役場(地方創生課 0280-81-1309)や各校へご確認ください。教育まわりの取り組みは境町の英語教育まとめでも整理しています。
いま訪ねるなら「モンテネグロ会館」へ
隈研吾さん設計、境町では5棟目
境町公式サイトによると、1937年に建てられたモンテネグロ会館は、築81年が経った2018年、日亜外交樹立120周年の年に駐日アルゼンチン大使が来館し「日亜両国の友好の証として遺してほしい」との言葉を受けて、国の地方創生拠点整備交付金を活用して改築されました。設計は隈研吾さん、完成は2020年9月で、境町における隈さん設計の建物としては5棟目にあたります(確認日:2026-07-28)。
改築後の建物には、80年以上つづく交流の歴史を展示するギャラリーと、チャレンジショップが併設されています。当時の古材や家具、看板を活かした空間なので、「新築のきれいな建物」というより「古いものが残ったまま新しくなった建物」という感じ。個人的に推したいのは、この時間の層が見えるところです。
隈研吾さん設計の他の建物とあわせて回るなら、境町の隈研吾建築めぐりもどうぞ。
会館のさしま茶カフェ「茶cafe&shop chabaco」
会館のなかには、境町の特産であるさしま茶を楽しめるお店が入っています。道の駅さかい(さかいまちづくり公社)の公式サイトでは「茶cafe&shop chabaco モンテネグロ会館」として紹介されています。基本情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容(2026-07-28確認) |
|---|---|
| 施設名 | モンテネグロ会館(茶cafe&shop chabaco) |
| 住所 | 茨城県猿島郡境町上小橋446-4 |
| 営業時間 | 火曜〜土曜 10:00〜16:00 |
| 定休日 | 日曜・月曜 |
| 電話 | 050-3138-2885 |
| 会館についての問い合わせ | 境町役場 地方創生課 0280-81-1309 |
営業時間・定休日は変更されることがありますし、店舗が入れ替わる可能性もあります。境町公式サイトのモンテネグロ会館のページでは、チャレンジショップとして別の事業者の名前が案内されている時期もありました。おでかけ前に、道の駅さかい公式サイトや電話で最新の状況を確認しておくと安心です。
東京2020、アルゼンチン選手団が境町に来た
2016年、ホストタウンに登録
境町公式サイトによると、境町はかねてから親交のあったアルゼンチン共和国の事前合宿を誘致する交流計画を策定し、国(内閣官房)へホストタウンの登録申請を行いました。その結果は2016年6月14日の担当大臣の記者会見で発表され、境町の登録が認められています。このときの2次登録では、全国83件の審査対象のうち47件が登録されたとのことです。
2021年7月の事前キャンプ
境町公式サイトの「2020東京オリンピック情報」ページには、実際に受け入れた競技と期間が記載されています(確認日:2026-07-28)。
| 競技 | 期間(2021年) | 練習会場 |
|---|---|---|
| 女子柔道 | 7月2日〜7月18日 | 境町立武道館、S-study&heart(フィットネスルーム) |
| 男女ホッケー | 7月12日〜7月19日 | 境町ホッケーフィールド、S-study&heart(フィットネスルーム) |
| 女子バレーボール | 7月14日〜7月18日 | 境町シンパシーホール体育館、S-study&heart(フィットネスルーム) |
外務省の記事によると、境町はアルゼンチン代表がより良い環境で練習できるよう、オリンピック仕様のホッケー場とテニスコート4面(うち屋内2面)を整備し、柔道場の改修なども行ったとされています。受け入れた選手団は約100名。ホッケー代表が選手村へ向かう日、バスが長田小学校の前を通ると、アルゼンチン国旗を手にした子どもたちがベランダや校門からエールを送っていた——というエピソードも紹介されています。
いまも使われている「レガシー」
このとき整備された施設は、いまも現役です。境町ホッケーフィールドとSAKAI Tennis Court 2020は、SAKAI SPORTS PARKの施設として一般の予約利用ができます(利用料金は施設・曜日・居住地域で異なります/確認日:2026-07-28)。テニスコートは境町アーバンスポーツパークと同じ上小橋560-3にあり、モンテネグロ会館(上小橋446-4)とはすぐ近くです。
アーバンスポーツ側の遊び方は境町アーバンスポーツパーク完全ガイドにまとめています。
半日で回る「日亜交流さんぽ」プラン
上小橋エリアは、モンテネグロ会館・アーバンスポーツパーク・テニスコートが近い場所に集まっています。私がよく人にすすめるのは、こんな組み立てです。
- 午前:モンテネグロ会館でギャラリーを見て、さしま茶で一服(火〜土の10:00〜16:00が営業時間なので、日月は避けます)
- お昼:道の駅さかいまで移動してランチ。さかいサンドもこのあたりです
- 午後:アーバンスポーツパークで見学や体験、あるいは歴史さんぽコースへ
東京から車を使わずに来る場合は、東京駅から境町高速バスターミナルまでの高速バスが便利です。詳しくは境町の高速バスの使い方と、日帰りモデルコースをどうぞ。
行く前に確認しておきたいこと
- モンテネグロ会館内のカフェは日曜・月曜が定休です(2026-07-28確認)。週末に行く場合は土曜がねらい目です。
- ギャラリーの見学可能時間や休館日は、カフェの営業時間と一致しない場合があります。確実に見たいときは事前に問い合わせを。
- 営業時間・定休日・運営事業者は変わることがあります。最新情報は道の駅さかい公式サイトや境町公式サイトでご確認ください。
- ホッケーフィールドやテニスコートは予約制の貸切施設です。試合や大会がない日は中に入れないこともあります。
- 長田小学校は現役の小学校です。校内の見学はできません。外からの見学もマナーにご配慮ください。
まとめ
境町とアルゼンチンのつながりは、黒船で出会ったふたりの縁が、手紙で80年後によみがえり、建物と奨学金になり、小学校の行事になり、最後はオリンピックの事前キャンプまでたどり着いた——という、ちょっと信じられないような流れでできています。
その全部を一度に感じられる場所が、上小橋のモンテネグロ会館です。展示を見て、さしま茶を飲んで、外に出るとオリンピック仕様のスポーツ施設がある。境町らしさが凝縮された半日になると思います。
境町の国際交流には、ハワイ・ホノルル市との姉妹都市という別の軸もあります。あわせて読むと、この町のちょっと変わった立ち位置が見えてきますよ。
参考情報
- 外務省 グローカル外交ネット「『黒船』から続く交流の絆(茨城県境町とアルゼンチン)」(2026-07-28確認)
- 境町公式ホームページ「モンテネグロ会館」(2026-07-28確認)
- 境町公式ホームページ「アルゼンチン共和国を相手国としてホストタウンに登録されました。」(2026-07-28確認)
- 境町公式ホームページ「2020東京オリンピック情報(事前キャンプ・試合日程)」(2026-07-28確認)
- 道の駅さかい公式サイト「茶cafe&shop chabaco モンテネグロ会館」(2026-07-28確認)
- SAKAI SPORTS PARK「アクセス・利用料金」(2026-07-28確認)
※この記事はSummy株式会社が運営する民間メディアによるもので、境町の公式発表ではありません。制度や料金、営業時間などは必ず一次情報でご確認ください。

